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悚摔详幉窑圣ぅ岍`ジがない。おそらく天性の性質によるもだと思われる。誰もが常に死と隣り合わせで生きている中で、彼には急(せ)いている様子がまるで無かった。大志を周囲に語ることは無く、無邪気な表情でとり止めもないような事を言っていたかと思うと、一端戦場に出るや研ぎ澄まされた刃のように一撃で敵を倒した。どれほどの手柄をあげても慢心するような挙動はなく、気軽に部下たちと世間話を楽しんでいたという。後年、彼を知る者で彼の人となりを悪く言う者はいない。それだけとってもこの時代の異端児であるといえた。
 沖田春香の裏列伝にさえ、本人の心情を綴った部分は少ない。彼の人格からくる魅力以上に積み上げてきた功績が他を圧倒する伝説的なものであったためだろう。武功が独り歩きをしている格好である。一説によるとゾンビ化するウイルスが日本に蔓延する3年以上前からゾンビへの対応の術(すべ)を父や桂剛志(かつら つよし)から学んでいたという。対ゾンビの戦闘という一点においても、エリート教育を受けてきたというgucci ショルダー
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ことになる。もしかするとこの破滅と混乱の時代は彼にはごく当たり前の自然のように感じられていたのかもしれない。幼少期について語られることも少なく、貴重な参考資料から考察しても、父親の勝郎と強い愛情で結びついていたとは考えにくい。父親は別に愛人を作り子どもをもうけていた節もある。軍の上層部に属していた勝郎は業務の多忙ぶりからほとんど自宅には寄り付かなかった。隠し子の件も明らかになり、春香の母親はそのための心労で倒

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第12話 栃木県日光市 中編2

第12話 栃木県日光市 中編2

 宿泊研修でこの地を訪れていた中学2年生の山崎裕香(やまざき ひろか)と藤野由比(ふじの ゆい)は避難場所を園内のさらに奥に移し、住吉太一(すみよし たいち)を筆頭とする野球部の面々と合流していた。
 40席ほどの小さな店内はカーテンが下ろされ完全に外部と遮断されている。ひとつのテーブルにはペットボトルの飲料水やハンバーガーなどのファーストフードが無造作に積み上げられていた。
「ここにいれば安心だ。この中で俺たちと一緒にいればやつらに襲われることはない。もし、やつらがここに入って来ても俺たちにはこれがある。」
身長が180cmほどある坊主頭の住吉が右手に持った包丁を裕香の目前に翳(かざ)した。他のメンバーも刃物や鉄の棒を持って武装している。みんないつもに無い血走った目をしていた。
「ここにいろよ、裕香。」
住吉が遠慮なく裕香に近づき肩に手を触れる。住吉が裕香に好意を持っていたのは周知の事実であったが、休み時間や放課後の部活動のときに目が合うと照れくさそうにしてその場を去るの時計 楽天casio
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でまともに会話などしたことが無い。やんちゃなグループのリーダー的存在だったが、裕香はそのシャイな雰囲気に好感を持っていた。少なくともこうなる前までは・・・。だが、目前にいる住吉はいつもと違った。鼻息荒く裕香に迫ってきた。
「住吉、慣れ慣れしく裕香に触るな。気色悪い!」
由比がそう言うと住吉の手を乱暴に払った。日頃の住吉だったら由比の言葉にすごすご引き下がるのだが今日は違う。怒りに満ちた表情で由比を睨み返す。裕香は床に落ちていた制服を拾い上げ、住吉に突き付けた。
「これ、理恵のだよね。どうしてここに落ちているの?」
住吉は一瞬まずいという表情をして、後ろの仲間たちを振り返った。他の者たちは一応にニヤニヤし続けている。それを見て安心したのか、
「裕香、大丈夫だよ。お前には俺がついているからな。絶対に誰にも手は出させない。約束する。」
「どういう意味?あなたたち理恵に何をしたの?」
「何って、ナニだよな。」
男たちの誰かがそう言うと、一斉に爆笑が起こった。由比が事態を飲み込んで住吉の胸倉を掴んだ
「あんたら理恵をレイプしたんじゃないだろうな!」
住吉は冷たい目で由比を見返す。また誰かが言った。
「同意のもとだよ。同意のもと。匿ってほしいからあいつが自分から服脱いだんだよな。
「だったらなんで理恵は首を切られてあんなところに投げ捨てられているのよ!」
住吉が力任せに由比の腕を振り切り、代わりに右手の包丁を由比の首に突き付けた。
「調子に乗ってんなよ藤野。今の状況がわかってんのか?先公たちはみんな死んだ。外はやつらでひしめき合ってる。一歩間違えりゃ俺たちも速攻であの世行きだ。だからここのルールは俺が決めてるんだ。逆らうんだったらここには置いておけねえ、お前は外だ。あ?どうする藤野?」
由比はそれでも住吉から目をそらさない。
「まあまあ住吉、熱くなるなよ。由比ちゃんはあっちで俺たちと仲良くやろうぜ。お二人の邪魔するのは野暮だからなー。」
そう言って一人由比に近寄ってきた。工藤だ。陰口を叩くのが好きな男で女子たちからは距離を置かれている。以前、由比に告白して振られた過去があった。その後、嫌がらせのようなことが2か月ほど続いた。
「キモイんだよ!気安く人の名前を呼ぶな!!」
由比が工藤の右頬を平手打ちした。場がシーンと静まり返る。
「このアマ!!!!」
工藤が由比の手を引っ張って引き寄せると、胸元から制服を力任せに破った。髪を掴み、床に押し倒す。
「何してんのよ!!」
裕香が止めに入るのを住吉が制した。包丁の刃が冷たく裕香の首筋に当たる。
「やるならあっちでやれ。口にタオル詰めるのを忘れるな!騒がれたら理恵のときみたいにやつらが押し寄せてくるぞ。」
興奮した工藤は荒々しく頷き、悲鳴を上げる由比を2、3発殴りつけながら奥に引っ張っていった。
「住吉くん止めてよ!私たちクラスメイトでしょ!仲間でしょ!」
「大丈夫だ。裕香は俺が守ってやる。あいつのことは構うな。口うるさいだけの馬鹿女だ。
「何言っているのよ!こんなこと許されるはずないでしょ・・・」
叫び出した裕香の口を住吉の口が塞いだ。

 何が起きたのか裕香は一瞬わからなかった。
 住吉の舌が入ってくる。
 裕香は慌てて口を閉じ、住吉を突き放した。

 初めてのキスの味は血の味がした・・・。

 「ガシャン!!」
店の奥で窓の割れる音。厨房の方だった。由比を羽交い絞めにして乱暴しようとしていた男たちの手が止まる。みんなが一斉にそちらの方向に注目した。また窓の割れる音。
「やべえぞ、住吉どうする!」
「5人で行くぞ!2人残れ。こいつらを監視してろ。」
それぞれが武器を持ち、奥へと向かう。また窓の割れる音。
 裕香は倒れた由比の方に走り寄り声をかける。由比は上半身裸にされた状態で、口にタオルを詰め込まれていた。急いでそれをはずす。口からは血が流れていた。小さな白い胸にも血が滲んでいる。由比は涙を流し裕香に抱き付いてきた。裕香もその頭を大事そうに抱え込んだ。
「最低だよあいつら。最低だよ・・・。」

 一方、厨房奥に進んだ住吉らは裏手のドア横の窓が割られているのを発見した。床にはガラスの破片とともに石が数個転がっていた。誰かが投げ入れたのに違いない。
「なんだよこりゃ!誰の仕業だよ!!」
石を手に取り、工藤が怒鳴り声を上げる。
 鍵が開けられ、ドアがわずかに開いていることに誰も気が付かなかった。
 「うー・・・うー・・・」
工藤の声につられてやつらが室内に侵入してくる。低いうなり声。ガラスの割れる音で周辺から5人寄ってきていた。その全員が制服姿。血まみれの顔がニヤリと笑う。
「ギャー!!」
最初の被害者は工藤だった。耳に噛みつかれ悲鳴を上げながら転げまわる。もう一人が工藤の喉元に食らいつく。ひゅーっという空気の漏れる音が工藤の口から漏れた。その場から逃げようとした者が背後から圧し掛かられ倒される。女々しい悲鳴が響き渡った。
 住吉の持っていた包丁が向かってくる相手の顔面を切った。割れた右目が床に落ちる。それでも相手は動じず住吉に襲い掛かった。右腕に噛みつき肉をごっそり剥ぎ取る。住吉の前蹴りが相手の胸に直撃し、肉を頬張りながら後ろに吹っ飛ぶ。
 「逃げるぞ!ここはもう駄目だ!!」
そんな住吉の指示など誰も聞いてはいない。それぞれがパニックになりながら格闘していた。
 悲鳴を聞いてさらに周辺からやつらが詰めかけてくる。いつの間にかやつらの数は20人を突破していた。住吉以外の者たちは全員床に押し倒され、生きたまま食らわれている。

 「どうするよ、おい、中に入って来てるんじゃないのか。」
裕香たちを見張っている一人が怯えながらもう一人に問いかける。住吉という柱が無ければまとまりなどない。どうしていいのかもわからないのだ。
 「お前らなんてやつらに食われて地獄に落ちればいいんだ!」
破り捨てられた制服の替わりに理恵の服を着た由比が高らかに叫ぶ。憎しみに満ちた瞳。
「に、逃げるか・・・。」
「馬鹿、どこに逃げるんだよ。」
二人には由比の声など届いてはいない。厨房からは男たちの悲鳴と争う物音。そこからダッと踏み込んできたのは住吉だった。腕や肩から大量の血を流している。由比を抱きながら座り込む裕香と目があった。獣のような色は消えている。何かを裕香に投げた。反射的にそれを受け止める。携帯電話だった。顎で逃げろと合図してくる。見張りの二人は住吉のその姿を見て喚きながらドアを開いて外に飛び出した。
 「由比、立てる?行こう。」
由比も事態が窮(きわ)まっていることを敏感に感じ、ヨロヨロと立ち上がった。表からも悲鳴が聞こえた。飛び出した二人はあっさりと捕まったのだろう。
 住吉の背後からやつらの姿が見えた。住吉は持っていた包丁を床に捨てた。視線はずっと裕香に注がれている。何かをつぶやくように言ったが、裕香には届かない。裕香はそんな視線を振り切り、開かれたドアから外に出る。5mほど向こうでは倒された二人にむさぼりつくやつらの姿があった。

 裕香は由比を支えながら、人気(ひとけ)の無い方向へと歩みを進めた。
 
 住吉の断末魔が店内から聞こえてきた。

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Sense66

 震える四肢でしっかりとこちらを睨みつけ、くすんだ毛並みの尻尾を高く立てて威嚇する黒い子狐。
 どう考えても、虚栄にしか見えない姿に可哀そうに、と思ってしまう人が多いだろう。

「ねえ、お姉ちゃん。あの子なんか、警戒心マックスだよ」
「分かってるよ。みんな、あんまり刺激するなよ。怯えちまう」

 とは言ったものの、明らかに交渉の余地はない。この子を拉致した奴らからの扱いが酷くて人間不信に陥ってるのかもな……って最近のAI凄すぎるだろ。自己学習機能で人間という種族を警戒するんだから。このゲーム、リアルを追求しすぎだって。

「まぁ、無難に餌付けだよな」

 そう言って、いくつかのお皿に、焼肉や野菜、火を通した魚介類、切り分けた果物を乗せて子狐に近づく。
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ありと恐怖しているのが分かる。最初の距離の中間地点まで移動して、これ以上近づいたら逃げられると思い、その場にお皿を置き、また下がる。
 元の位置まで戻った俺を油断なく睨んでいる子狐に対して、その警戒に苦笑が漏れる。また、俺を心配するように、腰元にすり寄るリゥイの頭を撫でて、言い聞かせる。

「今は見守ろう。見てるだけでいいから」

 リクール達とは、全く違う経路での出会いのために少々手間だろうが、こうして少しずつ様子を見ていくことにする。流石に、リゥイに無理やり抱きつこうとしたミュウでさえも威嚇と怯えを混ぜた子狐に無理やり触ろうとはしない。むしろ、一番その姿に困惑しているようにも見える。

 警戒を強めているが、空腹なのだろう。視線がこちらと目の前の料理とを行き来する。俺たちは、見ていると食べてくれないと思ったので、全員にわざと視線を外すようにする。
 そうすることで、初めて子狐の方から動き出した。小さな足取りでお皿に近づき、そこにある食べ物を少しずつ食べていく。
 警戒心を忘れ、ただ夢中でガツガツと食べる子狐は、俺が見ていることに気が付いていない。お皿の料理を食べ終わったところで、思い出したかのように距離を取り、警戒を強める。

「ちゃんと食べてくれるなら、心配はないね。ユンくん」
「そうですね。まあ、まだ食べ足りなさそうではありますが」

 マギさんの言葉に同意しながら、俺は、中間地点に置かれた空のお皿を回収し、再び料理を盛り付けて置く。
 子狐もさっきと同じように警戒心を強めつつも料理を食べる。
 俺が回収、子狐が食べる。という行動を繰り返す。俺も自分の分を食べながら、その様子を見守る。
 何度か繰り返し、満腹になったのか、寝床に戻ってそのまま、尻尾を抱えるように眠る。この時には、尻尾の毛並みもだいぶ良くなっていた。って、毛並み良くなるの早いな。目に見えて変化するとなんか変な気分だ。

「うーん。ユンっち、寝ちゃったね。シアっちや他の幼獣も寝ちゃいそうだし、寝かしつける?」
「そうだな。食事の片づけしたら、話し合いの続きとかしようか」

 そう言って、俺たちのログハウスにすでに寝ている幼獣含めた幼獣四匹を連れて、寝かしつける。リゥイは、幼獣とはいえ、俺の腰元以上の高さやそれなりの大きさがある。今日は、外に藁を敷いた簡易の寝床を作成したら、そこで眠り始めた。

「ふぅ、やっと一息つける。帰ってきてからも料理とかで働きぱなしな気がする」

 そう言いながら、インベントリ内のハーブティーを取り出し、食後のお茶として飲んで落ち着いている。湖での死闘や命がけの炎の特攻、ボロボロで帰ってきたらバーベキュー。いや、疲れた。

「さて、と。まずは何から決めていこうか。ユンを助けてくれたパーティーへの報酬から決めるか?」

 クロードがそう切り出したので、疲れて動きの遅くなった頭を再び動かし始めた。

「あー、それだと。多分必要な物は、武器や防具の耐久回復、ルカートの壊れた武器の代用、後はポーション類だけど、それでいい?」

 俺が、焚火のまわりで寛いでいるルカートに声をかける。

「はい。それで構いません。というよりも、貰い過ぎな気もしますが。夕飯までごちそうになって」
「そんなの、気にしないでいいよ。僕らは好きでやってるんだし」
「ですが……」

 ここで食い下がるルカート。俺的には適正だと思うのだ。あのまま、炎に焼かれてリタイアの可能性もあったのだ、むしろ安くさえ感じる。だが、雰囲気的にルカートたちはどうしても納得していない様子だ。

「うーん。それじゃあ、こうしよう。ルカちゃんの武器を代用とは言わずに、オーダー・メイドで作ってあげる。今後のケアもばっちりつけて。現状作れるのは、鋼製の剣だけど良い?」
「えっ!? だから、それは貰い過ぎですって!」
「その代わり……何かのアイテムと交換。ってのはどう? ギブ・アンド・テイク」
「そうですね。みんなはそれでいいですか?」

 ルカートがミュウを含める他のメンバーに尋ねると、皆が心地良い返事をくれる。

「じゃあ、それでお願いします」
「よーし、早速作る?」
「待て、マギ。まだ話は終わっていないだろ。ユンの見つけたレア武器の鑑定が残っている」
「そうだったね。忘れちゃ駄目だったね」

 俺は、インベントリから戦斧、対の短剣、魔法杖、そして長弓を取り出す。その取り出された武器には、ミュウたちも興味があるのか、近くに来て覗き込むが、対応するセンスがないのか、鑑定はされていない。

「ほほぅ、なかなか禍々しい外見だね。赤く明滅する斧って私好み」
「うーん。この短剣は僕のかな? マギっち、鑑定よろしく。杖と長弓は僕が鑑定するから」

 そう言って、さっそく鑑定する二人の顔は、気楽な様子から一転して、強張った。それは、緊張というよりも強い歓喜の色が強い。

「ねぇ……マギっち、そっちのはどんな感じ?」
「うーん。全部性能は同じだよ。全く、運営も良い趣味しているね」

 そう言って、それぞれの対応する武器を渡された。


 ヴォルフ司令官の長弓【武器】

 弓の名手にして獣人の司令官・ヴォルフの使っていた長弓。

 ATK+25


 ただ、これだけ? と思った。なぜなら、マギさんの包丁とほぼ同性能、リーリーの作った武器に完全に劣っている武器なのだ。
 だが次の瞬間に流れるメッセージに驚かされる。

【武器の追加効果容量は、通常最大10個まで付与することができますが、この武器は、最大15個まで付与することができます。またユニーク装備のため、奪われず、壊れません。追加効果は、自由に削除が可能ですが、付与する場合、再度同じ工程をしなければいけません】

「くくくっ……生産職にカスタマイズ武器の素体を渡すなんてな。良いセンスしている。運営は」

 クロードは、楽しそうに、それでいて不気味な笑い声を上げる。いや、言いたいこと分かるけど、雰囲気怖い。
 続いて、マギさんも、流石OSOだね。オンリーな武器を作る機会を与えてくれるなんて、と嬉しそうに自身の斧を撫でている。
 リーリーに至っては、ここでチート武器なんて渡されたら、生産職の存在が否定されるね。と言い出す始末。
 確かに、自分で武器を作れる人達にそれ以上の性能の武器や中途半端に良性能な武器を渡されるのは、興醒めとしか言いようがない。そう言った意味では、最良の選択と言えよう。
 でも……

「……今のところ、明確なカスタマイズのビジョンがないからどうするかな? これ」

 俺は、弓を持って改めて眺める。
 ちらっ、と周囲に目を向けると、ミュウが物凄く目をキラキラ光らせていた。まあ、なんとなく凄いものだと分かってはいたけど、ミュウが物凄く物欲しそうな目で見ていると、別の意味で不安になる。

「いーなー。激レアだよ、それ! 夢の魔改造武器ができちゃうよ。出来ることなら襲ってでも欲しいものだよ」
「物騒だな、おい。PKされたくないって」
「あー、PKの可能性があるか。まあ、奪われなくても、妬みぐらいはありそうだよね」
「マギさん、何のんきなこと言ってるんですか」

 ジト目で見返すと、あははっ、冗談だって、と手をひらひらさせる。だけど、冗談に聞こえないんだよな。

「ユンっち、最高の武器ありがとう」
「ああ、ゲームの目的に自分好みの装備の充実を考えている俺としては、嬉しい限りだ」

 リーリーとクロードにそう言われるとなんだか嬉しくもあり、背中がむず痒い。

「別に、気にするな。それより話は、これで終わりだな。後で、クロードの方には、メールで湖底のスクショ送っておくな。それと、ルカートたちは、ポーションだったな。必要な種類と数を言ってくれ。明日用意するから。あっ、マギさん、宝石余ってたらくれます? ちょっと今日つかいすぎちゃって」

 俺は、早口でこの話を終えると、それぞれが自分のやるべきことに動き始める。
 マギさんは、今日採取した宝石や鉱石を俺に渡してから、ルカート用の剣の製作に取り掛かる。
 クロードは、俺の破損した防具の修理や他の人の防具の状況などを話しながら、視線は僅かに彷徨っている。あれは、掲示板でも見ながら作業をしているのだろう。器用なことだ。
 リーリーに関しても同様で、杖の耐久度回復を行うが、杖はコハクとリレイ二人の二本だったために、未鑑定品の鑑定などを一番引き受けていた。
 そして、俺は……

「ユンさん、今日の報酬としてのアイテムの一つです」
「これは……スイーツ・ファクトリーか!?」
「はい。報酬のアイテムは、これと、あとヒマツブ・シザースのドロップの本です。私たち読めないので」
「それで……その本はどこに?」
「えっと、クロードさんが今持っています。後で読むのだそうです」

 その言葉を聞いていたのか、こちらに軽く手を上げるクロード。

「後で見せてくれるか」
「後でな。だが、これは俺の物だぞ」
「分かってるよ!」

 本は欲しいが、別に一度読んでしまえばいい。あっ、でもコレクションで全巻並んだ本とか見るのは、圧巻かもしれん。
 そう、妄想に浸っていたところをルカートに引き戻された。

「……で、ユンさん?」
「はい?」
「期待してますよ。お・か・し」
「……はい」

 嬉しそうに、楽しそうに、可憐な少女たちは、俺に微笑むのだった。そう、お菓子のために、おやつのために。
 いや、良いけどさ。俺だってお菓子作りたいと思っていたんだし。
 そう思いながら、俺の夜間の生産活動は、お菓子作りに決めた。
 内容は、材料と道具を見ながら考える。
 道具が、魔道式泡だて器、ボウル、ケーキの型やクッキーの型、それから無限増殖耐熱容器などなど。お菓子作りに必要なベーキングパウダーなんかが相変わらず無限をデフォルト状態で存在する。
 必要な道具や基本的な物が殆ど揃っている。
 また、材料も小麦粉から始まり、野菜や果物、卵がある。あいにく牛乳がないために、難しいものは出来ない。だが作る料理は決まっていた。俺の目に止まったアイテムはとても馴染みのあるアイテムだ。

 そう――ブルーゼリー。ブルーポーションの原料であり、更に一歩進むと食材アイテムのブルーゼラチンになるアイテム。
 早速、スキルを駆使し、ブルーゼラチンを量産した俺。ブルーゼラチンは、薄い青色の粉末ゼラチンだ。
 そこからの料理作業は簡単だ。
 リゥイの生み出した水を温め、そこに、溶けやすいようにゼラチンを投入するだけ。
 完全に溶ける間、フルーツなどを取り出し、細かく刻む。リンゴ、イチゴ、ミカンなど採取したフルーツを揃える。時折、摘み食いにやってくるミュウとリレイ、そしてヒノを迎え撃ちつつ、ゼラチンの溶けた液を確認する。
 完全に、ゼラチンが溶け、薄い青み掛かった液を舐めてみると、甘味が全く足りない。なのでここで砂糖も投入して甘さを整える。
 砂糖も完全に溶けたのを確認して、無限増殖耐熱容器に、フルーツを入れて、液を注ぐ。
 とろっとした液が満たされ、鮮やかなゼリーが出来上がる。

「うーん。やっと甘いものだよ! お姉ちゃん、最高!」
「まだ冷えていないから食べるなよ。これは明日の分だ」

 とはいっても、十人と幼獣五匹に対して、30個は多かったかな? なんせ、ストーブの火力の強さや付属の鍋の大きさが意外とあって多めに作ってしまった。
 それに、冷蔵庫なんてないキャンプ地だ。冷却の頼みは、幼獣のリクールで、その幼獣も今は夢の中、俺たちの都合で起こすわけにもいかない。
 だからと言って、クッキーとかの一般的なものを作るために必要なバターなんかが足りないわけだ。

「大人しく我慢してろ。お菓子作るのに牛乳だけが足りないんだ」

 そう言って、作ったゼリーをインベントリに片づける。
 ゼリーのステータスは、ブルーハワイ・ゼリーとなっていた。スライムって、ブルーハワイ味なんだ。とか素朴に思ったり。更に、保存したゼリーの名前の後ろに(常温)とか書いてあるし。
 あんまり嬉しくない情報だが、細かいステータスには嬉しい情報が記載されている。


 評価5
 空腹度回復10% 一時間のMIND+5


 まあ、元はモンスターの食材だからな。モンスターの食材はステータス強化されるとは聞いていたが初めて見た。そして、それが自分の手で作ったものだからちょっと嬉しい。

「うん? どうしたの、お姉ちゃん?」
「いや、別に? 俺は今日疲れたからもう寝るな」
「あ、うん。お休み」
「お休み」

 俺は、その場にいるみんなに声をかけて、ログハウスへと一番に向かう。
 昨日はリーリーが一番に眠ったが、今の俺は、寝ると決めた瞬間から一気に眠気が襲ってきた。
 なれないワンピースの裾が捲れないように注意しつつ、ベッドに体を横たえる。
 横目で、すでに寝ている子狐やリクール、クツシタ、ネシアスを眺める。
 疲れて目を閉じれば、意識が一気に闇の中に落ちる。
 最後に思ったのは、ああ、俺結構疲れていたんだな、という感想。無事、二日目を終えることができた。
************************************************
ユンの湖底からの武器をクロスボウから長弓に変更

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第2話 魔獣狩り(前編)《イラスト:ドリアテッサ》




 1

 どこで魔獣を狩るか。
 あたりまえに考えればパクラ領だ。
 だが行って帰るだけで百日かかる。
 しかも、ここに帰ればよいわけではなく、ゴリオラ皇国に行かねばならないのだから、三十日は余分にみなくてはならない。
 天候が荒れたときのために、さらに十日は余裕がほしいところだ。

 辺境競武会は来年の四月に行われ、その代表者は一月に決定されるという。
 魔獣の首を持って帰るぎりぎりの期限は、今年の最後の日、つまり十月四十二日だというのだ。
 今日が八月十三日だから、残された日数は百二十九日ということになる。
 つまり、パクラに行って帰ったのでは間に合わない。
 そのうえ、パクラに着いても、テルシア家の家臣に見つからないよう魔獣を見つけて倒さなくてはならない。
 無理だ。

  いっそ、大障壁を越えるか。

 ここから真東に進めば、十日から十五日ほどで大障壁に着くだろう。
 大障壁を乗り越えて向こう側に行けば、そこは魔獣がうろつく秘境だ。

  いや。
  やはり無理じゃのう。
  あの壁は越えられんわい。

 大障壁は壁面が垂直に切り立っており、高さが千歩ほどもある。
 草や木が生えてはいるが、あまりしっかり根を張ってはおらず、鎧を着け武器を持って上ってプーマ靴
プーマ シューズ
プーマ
下りるのは、いかにも無謀だ。
 といって、ここら辺りをうろついてもしかたがない。
 いったいどこに行けばよいのか。
 ここでバルドの頭に恐ろしい着想が浮かんだ。

  待てよ。
  ジャミーンの勇者イエミテは何と言った。
  ここらでは魔獣の出没は珍しくない、と言わなんだか。

 テッサラ氏族の居住地なら、パクラに行く三分の一ほどの距離だろう。
 ジャミーンの許しが得られるかどうかは分からないが、行ってみる価値はある。
 大障壁のこちら側とはいえ、亜人たちが占有する区域に踏み込み、しかも狩りをしようなど正気の沙汰ではない。
 魔獣を祖先の霊が宿る獣と考えているようだから、なおさらだ。
 が、とにかくあたってみることはできる。
 必要ならもう一度霊獣とやらと戦ってもよい。
 そう考えていたとき、用事に出ていたジュルチャガが帰って来て、少し焦った調子で言った。

「ごめんよ。
 もうちょっと早く帰ってくりゃよかった。
 この小屋、囲まれかけてるよ」




 2

 相手は村のほうからやって来た。
 騎士三人と、従騎士六人。
 そして従卒が十人。
 従騎士は投げ槍を持ち、従卒は弓と矢を持っている。
 悪いことに、馬は村長に預けて飼い葉を取らせている。
 小屋の後ろ側の壁を破って森に逃げてもいいが、徒歩では逃げきれない。
 ドリアテッサはいつものようにプレートアーマーを着けており、走る速度は遅い。

 ドリアテッサの言っていた追っ手だろう。
 だが、村の中にいれば襲ってこないだろうと、ドリアテッサは考えていた。

 ドリアテッサがオーヴァを越えて魔獣を狩りに行くことが決まったとき、シェルネリア姫の姉姫であるエルザ姫が、ぜひ母の実家の騎士にお供をさせてください、と申し出てきた。
 エルザの母親の実家はヴォドレス侯爵家であり、勇猛な騎士団を抱えている。
 シェルネリア姫は、ドリアテッサの同意を得て、これを受けたのだった。
 それにしてもドリアテッサの家からも騎士を出してもらえばよかったのにとバルドは不思議に思ったが、何かわけがあるのだろう。

 オーヴァを渡るまでは何の問題もなかった。
 だが、ヤドバルギ大領主領を抜け、ボーバード領に入ったあたりから、様子がおかしくなった。
 みょうにぐずぐず行動し、ドリアテッサの指示に従おうとしない。
 |業《ごう》を煮やしたドリアテッサは、従騎士二名と従卒一名だけを連れて、東北の村に魔獣の噂を調べに行くと言い捨てて先行した。
 そして実際には東南の村に向かった。
 その時点ではヴォドレスの騎士たちを疑っていたわけではなく、突然東南のほうがいいような気がしたのだ。
 その周辺を調べていたときに、従騎士と従卒に襲われ、辱めを受けそうになったのだ。
 そのとき従騎士が漏らした言葉から、供連れすべてが敵だと分かった。

 ここは小さな村だが、それでも五十人は人がいるだろう。
 ヴォドレス侯爵家の騎士がドリアテッサを害したなどと知れれば大事になる。
 だから村では襲われないと考えたのだ。
 ところが襲ってきた。
 それが意味するところは、あまりに恐ろしい。
 村人を皆殺しにするつもりなのだ。

「まさか」

 ドリアテッサの顔は蒼白である。
 そして、

「すまぬ」

 と、悔しさをにじませた声で言った。
 ドリアテッサはあちらの人数も装備も強さも知っている。
 馬なしで馬に乗った騎士と戦う不利も知っている。
 とうてい勝てない戦力差だ。
 自分はもちろん、目撃者となるバルド、ゴドン、ジュルチャガを生かすはずはない。
 ドリアテッサとともに三人は死ぬ。
 巻き込んでしまったことをわびたのだ。

 バルドは、ドリアテッサとゴドンに小屋の外に出るよう合図した。
 ジュルチャガには小さな声で、小屋の中で物音を立てて人が何人もいるように見せよ、と指示した。
 村人にこちらの人数は聞いているだろうが、多少は集中を妨げられるだろうとの狙いだ。

 中央に三人の騎士がおり、馬に乗っている。
 その両側に三人ずつ投げ槍を持った従騎士がおり、やはり馬に乗っている。
 中央の騎士はプレートアーマーを着け、他の騎士と従騎士は軽鎧を着けている。
 従騎士の前には左右に五人ずつ弓を構えた従卒が扇状に展開しており、こちらは徒歩だ。
 小屋は村のはずれにあり、入り口の前には細い道らしいものがあって、その周りにはまばらに木が生えている。

 陣容も布陣も、理に適っている。
 従騎士六人は、投げ槍を投擲したあとは腰の長剣を抜くだろう。
 従卒十人は、最初に弓を射たら恐らく邪魔にならないように後ろに下がるだろう。
 従卒の腰に短剣が吊ってある。
 長剣を持たせないのは、振り回したら味方の邪魔になるからだろう。
 もともと戦力外に近い従卒に弓を装備させたのは見事だ。
 しかも中央の騎士三人からは、強い武威を感じる。
 魔獣を狩るにふさわしい一団だ。
 しいていえば、中央の騎士以外がやや軽装であることが、魔獣相手とすれば心細い。
 おそらく森の中での追撃に備え、身を軽くしているのだ。
 防御力の高い武具は別に持って来ているに違いない。
 なるほど、ヴォドレス侯爵家が優れた武人を抱えているというのは本当のようだ。

 ドリアテッサは、張りのある声で襲撃者たちに言い放った。

「ヘリダン殿。
 オルストバン殿。
 メッサラ殿。
 いずれ劣らぬヴォドレスの勇者が、女一人の首をお望みか」

 答えたのはまん中の初老の騎士だった。
 これがヘリダンなのだろうか。

「コヴリエン子爵様。
 あなたの首を欲しいとは思いませぬ。
 されどこれも武家のならい。
 ご覚悟を」

「武家のならいとは、味方のふりをして女騎士にしびれ薬を飲ませ、さかりのついた獣のように襲うことか」

「何っ!?」

 ヘリダンは、怒りの形相で横にいた騎士をにらみつけた。
 にらまれた騎士は平気な顔をして、ちらとヘリダンを見たきり、何も言わなかった。
 しばらく同僚をにらみつけてから、ヘリダンはこちらに視線を戻した。

「そのふらち者どもは、いずこに」

「斬って捨てた」

「それは、よかった」

「一つだけ教えよ。
 私は|騎士たちの園《ガルデガツト・ライエン》で何色の花を摘めばよい。
 赤い花か。
 白い花か」

 分かりにくい言い回しだが、たぶん死んだあとに誰を恨めばよいかを尋ねているのだろう。
 不利な状況を利用して情報を聞き出すとは、このおなご、なかなかやるではないか、と感心した。
 騎士ヘリダンは右手を上げながら、

「あなたには赤い花が似合いましょうな。
 構え」

 と、答えつつ攻撃準備を命じた。
 従騎士は槍を構え、従卒は矢を弓につがえた。
 騎士ヘリダンの手が下ろされるとともに、攻撃の号令が発せられる。
 そうすれば、弓と槍が飛んで来る。
 絶体絶命といってよい。

 ドリアテッサと騎士ヘリダンのやり取りを聞きながら、バルドは思案していた。
 小屋の中にとじこもれば多少は弓を防げる。
 しかし槍は粗末な壁や屋根をたやすく貫くだろう。
 また、こもってしまえば反撃の機をつかめず、なぶり殺されるのを待つだけだ。
 このよくできた半包囲陣を乱す手はないものか。
 わずかな時間でよいから、敵の気をそらすことができれば、飛び込んで乱戦に持ち込めるのだが。
 乱戦に持ち込んだところで勝ち目は高くないが、それ以外に活路はない。

 騎士ヘリダンが右手を上げたちょうどそのとき、バルドの目は遠巻きにする村人を割って進んできた男をとらえた。
 その男もバルドを見た。
 バルドは、何とかなるかもしれんのう、と思った。

 音もなく、かげろうのように近づいて来るその男を、バルドは知っている。

 〈|赤鴉《ロロ・スピア》〉ヴェン・ウリルである。





 3

 ゆらり、と姿をゆらめかせ、ヴェン・ウリルは左翼の三人の従騎士たちに襲い掛かった。

 一人目の従騎士が、槍を持つ手を肘の下で断ち切られるのが見えた。
 切られた従騎士は大声を上げ、襲撃者たちは一斉に振り返った。
 騎士ヘリダンは攻撃を命ずるタイミングを逸した。
 好機を逃さず、バルドは突進した。
 二人目の従騎士が、右脇腹を深々と斬り裂かれるのが見えた。
 バルドに少し遅れてゴドン・ザルコスが突進を始めた。
 バルドたちの動きに気付き、あわてて弓を撃つ従卒が何人かあった。
 二本が胸と腰に当たったが、強靱な革鎧にはじかれた。
 委細構わず従卒の横を走り抜け、バルドは左側の騎士の左に走り込んだ。

 騎士ヘリダンは剣を振り上げてバルドを迎え撃とうとしたが、左側の騎士が邪魔で攻撃できない。
 左側の騎士は剣をなかば振り上げていたが、ヴェン・ウリルの動きに驚愕していたため、バルドへの対応が遅れた。
 バルドは、すれちがいざまに騎士の右膝を古代剣で打ち据えた。
 その騎士はしっかりした革鎧を着けており、胸部は金属で補強してあったが、膝は装甲が薄そうに見えたからだ。
 ねらい通り膝を砕いた手応えがあった。

 バルドはちらりと左翼を見た。
 左翼の三番目の従騎士が馬から落ちるところだった。
 ヴェン・ウリルは左翼の従卒たちをなで切りにしながら、中央に向かっている。
 左翼はヴェン・ウリルに任せておけばよいと判断し、バルドは右翼に後ろから回り込むことにした。

 金属が金属を撃つ、すさまじい音がした。
 ゴドン・ザルコスが、騎士ヘリダンを打ち据えたのだ。
 吹き飛ばされるように落馬するヘリダンが見えた。
 バルドが仕込んだ通り、ゴドンは騎士ヘリダンの右側に走り込んだようだ。
 徒歩で馬上の敵と戦うときは、武器を持つ反対側に回れ、とバルドは教えた。
 騎士ヘリダンは、自分の乗る馬の首が邪魔になり、攻撃の威力と速度が落ちたはずだ。
 ゴドンの持つバトルハンマーがあまり大きくないので油断したかもしれない。
 また、襲撃者たちの中では唯一、騎士ヘリダンはプレートアーマーを着込んでいた。
 だが、ゴドンが振るバトルハンマーは、バルドをして盾があっても受け止められないと思わせる威力を持っているのだ。

 ヘリダンの右側にいた騎士が、振り下ろしていた剣を振り上げた。
 一撃目はゴドン・ザルコスを打ったのかもしれない。
 そんな音が聞こえたような気もする。
 もう一度ゴドン・ザルコスに攻撃を加えようとしたのだろうが、ゴドンは走り込んだ勢いのまま走り去ってしまった。
 そのゴドンと交差するように、バルドは三人目の騎士の後ろを右翼方向に走る。
 三人目の騎士は、バルドの動きに合わせて馬を右に回頭させようとして、立木に動きを妨げられた。
 その右脇腹に、バルドの古代剣が食い込んだ。
 陣羽織の下に軽鎧を着けているかと思ったが、そうではなかったようで、剣は深々と腹を裂いた。

 がちゃがちゃという音が聞こえる。
 ドリアテッサが走ってきているのだ。
 かんかんという音もしていた。
 矢が当たっているのだろう。
 がいん、がいんという音を聞きながら、バルドは振り向いた。

 右の肩口に衝撃があった。
 馬に乗った従騎士が、投げ槍を振り下ろして突いてきたのだ。
 バルドは左から右に古代剣を振り、従騎士の右脇、腕の付け根に切り付けた。
 革鎧は突きには弱いものなのに、バルドにはまったく損傷がない。
 革鎧職人ポルポは、この鎧が金属鎧なみの防御力があると言っていたが、まさにその通りだった。
 うめく従騎士の右手をつかんで馬から引きずりおろしつつ、首筋に古代剣をたたき込んだ。

 その向こうではドリアテッサが従卒たちをたたき伏せていた。
 二人の従騎士が抜剣してドリアテッサを狙っているが、逃げ遅れた従卒たちが邪魔になっている。
 それでも一番右側の従騎士が馬を横向きにして、うずくまる従卒の頭越しに、ドリアテッサに剣を振り下ろした。
 ドリアテッサは体をひねってこれをかわし、相手の右腕に剣を振り下ろした。
 細い剣だが相当の業物と見えて、深々と腕を斬り裂いた。
 従騎士は剣を取り落とし、左手で右手を押さえた。
 そこに後ろからゴドン・ザルコスが走り込んできて、その従騎士の腰を打ち据えた。
 従騎士は前に飛び出し、馬の首にすがるようにしながら崩れ落ちた。

 バルドは目の前の馬を回り込みながらこの様子を目の端にとらえていた。
 バルドが最後の従騎士にたどりつく寸前、その従騎士は、うおっ、と叫んで落馬した。
 手綱を持つ手首を、ヴェン・ウリルが切り落としたからだ。

 残った従卒たちには、もはや戦闘能力も戦う気力もなかった。




 4

 バルドは抜き身の剣を持ったまま、戦場を検分した。

 左翼の一番目の従騎士は、右手を失ったが、手当てすれば命は助かるだろう。
 左翼の二番目の従騎士は、腹を裂かれていて、生き延びるのは難しい。
 左翼の三番目の従騎士は、喉を突かれて死んでいた。
 ヴェン・ウリルによるものだ。
 馬を見ると、|鐙《あぶみ》を固定する革のベルトが切られている。
 どうして落馬したか、これで分かった。
 足の内側にあるベルトをどうやって切ったのかは分からないが。

 左翼の従卒五人は、いずれも足や手を軽く切られているだけで、命に別状はない。

 騎士ヘリダンは、バトルハンマーで左側頭を打たれたようだ。
 止め金具がちぎれ飛んでおり、よく首が折れなかったものだと思った。
 へこみのついた兜を外したところ、出血はあるが、致命傷は受けていなかった。
 非常に立派な鎧だ。
 そうでなければ死んでいたろう。

 バルドが膝をつぶした騎士は、首を切られて死んでいた。
 これもヴェン・ウリルの仕事だろう。

 バルドが脇腹を裂いた騎士は、馬から落ちて仰向けに横たわっている。
 腹からは血と臓物があふれ出し、顔色は白く、がくがくと震えている。
 この騎士はもはや助からない。
 もう苦しみを止めてやるべきだ。
 バルドはヴェン・ウリルを見た。
 ヴェン・ウリルは、バルドの思惑を察したのだろう。
 ふわりと歩いてくると、何気なく剣を振った。
 首がとさりと落ちた。

 右翼の五人の従卒のうち、二人は頭や肩にかなりの傷を負っているが、三人は無傷だ。
 右翼の三人の従騎士のうち、一人は右腕と腰を痛めているが、死ぬことはないだろう。
 バルドが首筋を切った従騎士は、大量の血を失っており、意識もない。
 まだぴくぴくと動いてはいるが、すぐにこの世を去るだろう。
 ヴェン・ウリルが手首を斬り落とした従騎士は、すぐに手当が必要だ。

 ドリアテッサはと見れば、血にまみれた剣を持ったまま呆然としていた。
 何が起きたのか、理解できていないのだろう。
 死ぬしかない状況であり、覚悟は決めていた。
 それなのに戦闘が終わってみれば、自分たちは立っており、敵は倒れているのだから無理もない。
 襲ってきた騎士三人のうち二人が死に一人は気絶。
 従騎士六人のうち三人が死に三人は重傷。
 それに対してこちらは傷らしい傷さえない。
 圧勝といってよい。
 だが一つ間違えば|骸《むくろ》となって横たわっているのは、こちらのほうだったのだ。
 ヴェン・ウリルが絶妙のタイミングで参戦したことは、じつに大きかった。
 それでも、敵の騎士がすべてプレートアーマーを着けているか、矢に毒が塗ってあれば、こちらの被害も甚大だったろう。
 
 バルドはドリアテッサに、

  村人に子爵殿の身分を告げて、襲撃されたから迎え撃ったと説明しておいたほうがよろしいぞ。
  それとけが人の手当を手伝うよう命じられよ。

 と助言した。
 ドリアテッサは、その通りにした。
 バルドは、動ける従卒たちに仲間の手当をさせ、一段落したところで、死者を安らかに横たえさせた。
 粗末な敷布の上に寝る死者たちの前でバルドは片膝を突き、目を閉じて、死者の安寧を祈った。
 敵も味方も村人も、バルドにならい、帽子を取り、膝を突いて黙祷した。

 バルドは、襲撃者たちの始末はどうされる、とドリアテッサに訊いた。
 ドリアテッサはかなり長く黙考したすえ、このまま放免する、と言った。
 バルドが、ヘリダンという騎士は約束を守る男ですかの、と訊いたら、ドリアテッサはそうだと答えた。
 そこで、バルドは、

  報告の手紙を書いて騎士ヘリダンに渡し、必ずあなたの父君に届ける、と誓わせてはどうですかな。

 と言った。
 ドリアテッサ自身がすぐに帰国できないのだから、事実がゆがめられて伝えられる恐れがある。
 ドリアテッサもそれはいい考えだと同意し、そのようにした。
 騎士ヘリダンは、少し前に目を覚ましていたようで、二つの誓いを立てて解放された。
 一つは、ドリアテッサの手紙をファファーレン侯爵に届けることだ。
 もう一つは、この出来事の顛末を正確にヴォドレス侯爵に報告することだ。
 部下たちが出発できる状態になったら出発するだろう。
 重傷者は村に置いていかれるかもしれない。

 夕食のとき、ジュルチャガがヴェン・ウリルにこう言った。

「ヴェン君。
 間に合ってくれてありがとねー。
 でも正直ゆーと、もうちびっと早く来てほしかった」

 ヴェン・ウリルは、こう答えた。

「ジュルチャガ。
 目印は助かった。
 礼を言う。
 もう少し早く着くはずだったのだがな。
 |大赤熊《デッサロローヴァ》の魔獣と出遭ってな。
 それが実に見事な魔獣だったので、しばらく眺めていたのだ」

 これを聞いて、一同は思わずヴェン・ウリルを凝視した。
 バルドが、魔獣と遭ったじゃと、どこでじゃ、と訊くと、ヴェン・ウリルは、

「三日前だ、あるじ殿。
 霧の谷からここに来る途中だった」

 と答えた。



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イラスト/マタジロウ氏


 

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10月10日「魔獣狩り(後編)」に続く

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千春もね」
「そうなる為にだね」
「頑張る」
 いつもの微笑みに戻ってだ。答える千春だった。その顔もあげて。第八話 友情もその六

「そうしてね」
「いいよ」
 にこりと笑ってだ。快諾する千春だった。
「何時でもいいよ」
「何時でもなんだ」
「だって。希望は千春の恋人だから」
 その笑みでの言葉だった。
「だからね」
「それでなんだ」
「そうよ。何時でもいいよ」
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言うのだった。
「じゃあ明日ね」
「うん、明日ね。それでね」
「それで?」
「こんなこと言ったら駄目かな」
 少し戸惑ってからだ。希望はだ。
 一呼吸置いてからだ。こうも言ったのだった。
「ええと。もっとね」
「もっとって?」
「門限とかそういうの気にしないで」
 そうしてだというのだ。
「千春ちゃんとずっとね」
「ずっと?」
「そう。ずっといたいと思うけれど」
「そうね。それはね」
「千春ちゃんもなんだ」
「毎日会えるけれどそれでも」
 どうかとだ。千春はここでは俯いて言うのだった。
「御別れの時はね」
「その時はだよね」
「寂しいから。とても」
 それでだというのだ。
「だからいつも一緒にいられたら」
「そうだね。それはね」
「希望もなのね」
「うん、そうなんだ」
 こう話す希望だった。
「やっぱりお別れの時はね」
「寂しいのね」
「寂しくて。それに」
「それに?」
「辛いよ」
 この気持ちもあるというのだ。希望に。
「とてもね。だからなんだ」
「千春と一緒に」
「いたいんだ。ずっとね」

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「へ、へぇ~???、そ、そうなんですかぁ???。」
源次郎は意外だった。
東京で行った店は、とてもそうしたお客がいるとは思えなかったからだ。
店も変態チックならば、お客も変態趣味。
そうした印象しかなかった。二度と来たいとは思わなかった。

「だから、そうして一度でも警察の手が入ったら、仮にお店が生き残ったとしても、そうしたお客さんはお店に来なくなるのよ。やはり、顔がさすでしょう?」
「ああ???、それは、そうでしょうねぇ???。」
「だから、この子がその回し者なのかどうかは別にしても、とても雇うことは出来ないって思ったのよ。」
「で、お断りになった???。」
源次郎は、当然にそうなったのだろうと思って確認をする。

「も、もちろんよ。“頑張ります”って言われても、うちのお店は男の子しか雇わないからって???。そう言って断ったの。」
「そ、そしたらニューバランス 1300
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?」
源次郎は、どうしてか不気味な感覚が背筋を走るのを覚えた。
ママの言い方に、「そう言ったんだけど???」という言い訳のような語尾を感じたからだ。

「“それは、夜のことでしょう?” この子ったら、平然とそう言うのよ。」
「ん?」
源次郎は、慌てて美由紀の顔を見た。


(つづく)



第2話 夢は屯(たむろ)する (その1160)

「つ、つまりは、それは夜のお店なんでしょうってね???。」
ママは中途半端な笑い方をする。

「お昼の間、喫茶店のような軽食とコーヒーを出すお店をやれば?って???。
これだけのお店を遊ばせる手は無いでしょうって???。」
「そ、そんなことを?! ??????。」
源次郎はまたまた美由紀の顔を見る。

今の美由紀ならば、そうしたこと

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、あるいはある程度は本音なのか。
そうしたことも、源次郎にとってはあまり気にならなかった。

東京から逃げ出して友人を頼ってやってきた北海道だが、その友人には会えもしなかった。
手持ち資金が底をついた。
で、食べるがためにアルバイトを探した。
3食と寝る場所を得られれば、どんな仕事でもよかった。
その結果としてのストリップ劇場でのアルバイトだった。

さすがに、それと知ったとき、最初は驚きもした。
まさか、そんなところでアルバイトとは???と絶句もした。
それでもだ。
ここが北海道だったことが幸いした。
誰も顔を知らないのだ。
源次郎を知っている人間などいやしない。
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でもやれそうな気がした。
そして、どうしても嫌だったら、いつでも逃げ出せる。
そう思っていた。

そうした状況の中で、美由紀と出会ったのだ。

「何てクソ生意気な女の子なんだろう」。
それが第一印象である。
もちろん、源次郎の好きなタイプではなかった。
いや、どちらかと言えば、嫌いな、そして苦手なタイプだった。

それなのに???。
その出会いから今日まで、源次郎は「逃げ出そう」と考えたことは一度もなかった。
仕事だと割り切っていた面もあるが、強気一辺倒の佐崎美由紀に対する憧れのようなものが生まれていたのは否定できない。


(つづく)



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■読者の皆様へ

仕事の関係から、明日(25日)は更新が出来ません。
あらかじめ、よろしくお願いいたします。

第2話 夢は屯(たむろ)する (その987)

その美由紀が、佐崎美由紀であることを封印したのだ。

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私はあまりにも身勝手なと自己中心的であった。

私は変化が私に幸せな結婚生活と生命をもたらすことを願っています。 私は私の好きな​​仕事を持っているので CELLI部品の多くの形態によって構成されているようにレディースバーバリーは、女性のバーバリーのハンドバッグをフィーチャーした、品質、革新性と同義である とスタイルナイキ シューズしらみ)をとつてくれい。」
 葦原醜男と須世理姫とは、仕方なく彼の後について、朝日の光のさしこんでゐる、大広間の白い帷ポテトプランターまたは厚い大きなプラスチック袋または大鍋や浴槽でそれらを育てる。
シリアル詐欺師 - どのように彼女はそれを処理する必要があります

質問:どのようにあなたが浮気夫やボーイフレンドを扱うのですか?

回答:あなたはすべての関係の状況に適用される原則を使用しています。

ここに私の読者の一人(私は 恋人に彼女の名前を変更します)からの最近の手紙は次のとおりです。

ミミ親愛なるhttp://ameblo.jp/chuang85
(大正九年)黒 バッグ?日本人が真似できる愛され顔セレブ、ブレイク?ライヴリーに注目。 一般的な愛はそれから冷たい鋼色(はがねいろ)の空シャネル カバンぢき)に見受けられ候趣にて、村方嘉右衛門殿、藤吾殿、治兵衛殿等も、其場に居合されし由に候へば、千万http://ameblo.jp/chuang18 なぜならタイプの広い数、これらの靴は、ほぼすべての服を一致するように配置することができる大島優子、前田敦子に最後の言葉「ここまで連れてきてくれてありがとう」 それは数ヶ月ごとにあなたのUggのブーツをスプレーしたり、必要に応じてみなした方がよいでしょう

あなたのウェブサイトの悪評は、ケリーオズボーン、パリスヒルトン、教授グリーン、オリーMursの等chatrouletteのがさらに顕著にNCISのテレビでは、テレビchatrouletteの英国の雑誌やお笑い番組にまでrefferedれているようなユーザを含めることができるサイトと一緒にその人気を高めました 文字が絶えずchatrouletteのコミュニティを通じて nextedたと喜劇を特色にしたエピソードらには妙にものものしい義足が一つ、白足袋(たび4位ケイティ?ホームズ、離婚準備をしていた!?? (ディオール)のでそれはなぜかというと、小さな女の子が、手に持っていた大きなアメを落としてしまったのを、岡田准一くんが、間一髪のところで、地面に落ちる前にキャッチする為だったというストーリーです必死で走る姿や、顔がなかなか素敵です!自分らしさ???という言葉がキーワードになっていて、ライトオンの服で自分らしさを表現してください。ということなんだろうけれど、かなり気になるキーワードですね自分らしさを表現するにはシンプルな服が一番ですね。服に着られてしまうのではなくて、あくまでも自分を表現する手段のひとつであるということを知ることが大事ですね実際に岡田准一君が着ていた服はかなりシンプルでした。自分らしさの表現が、女の子が落としかけたアメをダイブしてまで拾うこと、つまり日常生活のなかでの、些細なことでも他人のために頑張るという気持ち、それを大切にしましょうということでもあるのでしょうか。?ライトオン岡田准一のCMは素敵です愛の記念日私の食欲に小唄

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第十四話 能天その十二

「今回はな」
「それは一体どういう風の吹き回しだ?」
「事故が起こった」
 彼は言うのだった。
「そちらに行かなければならない。大きな事故だ」
「事故!?」
「何度も言うが私は死神だ」
 死神はここでも己のことを語った。
「死んだ魂を冥府に送るのが仕事だ」
「それで行くのか」
「そうだ。死んだ者が多く出た」
 こう語るのだった。
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「だからだ。その魂を全て冥府に送り届けに行くのだ」
「魔物の魂を刈るだけではなかったのだな」
 牧村は少し皮肉に彼に対して言った。
「それだけではないのだな」
「生憎私の仕事は多い」
 死神はその少しばかりの皮肉を受け流しながら言葉を返した。
「それだけではないのだ」
「そうか」
「今回は貴様が全てやるといい」
 ここまで話したうえでこう告げたのだった。
「私は何もしない。それではな」
「今から行くのか」
「既に死者の香りがする」
 香りと表現する。そこには死神独自のものがあった。
「それでな。今から行かせてもらう」
「わかった。では行くといい」
 牧村に止める理由はなかったし実際に彼も止めはしなかったcoach メンズ。実にドライに彼に対して言葉を返した。本当にそれだけであった。
「また機会があればな」
「会おうというのだな」
「どちらにしろまた近いうちに会うことになるな」
「おそらくな」
 双方共それは感じ取っているのだった。
「その時にな。また会おう」
「わかった。それではだ」
 死神はコートから去ろうとする。牧村に背を向ける。そしてそのうえで背中越しに彼に対して言ってきた。
「それでだ」
「今度は何だ?」
「貴様、香りが変わったな」
 こう言うのだった。
「私が最初に貴様に会った時とな」
「香りが変わった?」
「そうだ」
 また告げてきた。
「といっても死の香りではないがな」
「俺はまだ死なないのか」
「それもある」
 これもだというのだった。
「しかしだ。それとはまた別の香りだ」
「それは一体何だ?」
「それはすぐにわかることだ」
 今ここでは語ろうとはしないのだった。
「貴様がな。それではな」
「行くのだな、その事故の現場に」
「さて。どれだけいるか」
 表情を見せない言葉だった。
「それはわからないがな。今から言って来る」
「そうか。ではまたな」
「うむ。また会おう」
 こう言葉を交えさせたうえで姿を消す死神だった。牧村も練習をこれで終えてサイドカーでその街の離れた山のところにあるダムに向かった。その門の白いコンクリートのところに進むと目の前に一人の男がいた。それは白髪の背の高い老人であった。彼が門の上の部分にあたる通り道に立っているのだった。
 牧村から見て左手にダムの水がたたえられており右手から水が出ていた。そこは滝そのものであり水が勢いよく流れ出ている。監視の建物はその側にありそれも白いコンクリート製だった。前と後ろは山である。アスファルトの道がある以外は全て木々だ。その緑と茶以外は何もない世界の中にダムの白と水の青がある。そうした場所だった。
 その世界の中に老人は一人いた。背筋は伸びており品のいい黒いスーツに身を包んでいる。彼はサイドカーが前に来ても全く動くことがなかった。

N1803G-54
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第四話 改造その八

「今一本と言ったな」
「ええ、そうだけれど」
「五日前に一ダースセットを買った筈だが」
「食べればなくなるわよ」
「五日前だぞ」
 目だけを顰めさせて妹に問う。
「それでもう一本か」
「そう、一本よ」
「俺はまだ一本しか食べていない」
 その顰めさせた目で言うのだった。
「それで残り僅か一本か」
「また明日買えばいいじゃない」
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「御前食べ過ぎだ」
 素振りをそのままに妹にその目を向けての言葉である。
「一日二本も。幾ら何でも」
「いいじゃない、別に」
 しかし妹の返答は実にさらりとしたものだった。悪い意味で。
「好きなんだから。それにお兄ちゃんずっとスイカ食べてたじゃない」
「スイカはまた特別だ」
 こう妹に反論する。
「あれはな」
「あたしスイカあまり食べなかったし」
「それの分か」
「そういうこと。だったらいいわよね」
「ううむ」
「まあとにかくね」
 兄が考え込んだところを見てすかさず言葉を言い加えてきた。
「最後の一本は置いておくからね」
「そうか」
「食べるわよね」
「ああ」
 このことには異論はなかった。確かに食べるつもりだった。
「頂く。では食べるなよ」
「わかったわ。じゃあこれでね」
「?何処か行くのか」
「自分の部屋」
 全て舐め終えたところで兄に答えた。
「今から勉強しないと」
「ああ、そうか」
「そうよ。中学生は忙しいのよ」
「高校生よりもか」samantha thavasa usa
「それも知ってると思うけれど」
 くすりと笑って兄に問うてきた。
「お兄ちゃんも中学生だった時があるんだし」
「遠い昔の話だ」
 しかしこう答える兄だった。
「そんなことは忘れた」
「都合のいい記憶ね」
「自覚はしている。とにかくだ」
「ええ、キャンデーね」
 話はやはりそこに重点があった。
「置いておくからね」
「あと明日買っておく」
「買うの」
「そうだ、また一ダース」
 こう妹に述べる。
「買っておく。今度は一日一本にしておけ」
「わかったわ。一日一本ね」
 キャンデーの話が終わると未久は姿を消した。牧村はそれからも暫く練習をしていたがやがてそれを終えキャンデーを口にした。こうした日々を送り戦いに備えていたがある日。昼に街の橋の辺りをサイドカーで進んでいるとその横に一台のオートバイが張り付いてきた。
「!?バイクか」
「髑髏天使だな」
 直接彼の脳に語り掛けてきた声だった。
「そうだな。間違いないな」
「そうだと言えば」
 脳内で答えた。これで通じるかとも思ったが通じた。
「倒させてもらう」
 こう返事が来た。
「今ここでな」
「魔物というわけか。しかし」
 ここで彼は自分の左にいるそのマシンを見た。見ればごく普通のバイクであり男は漆黒のライダースーツを着て白いヘルメットを被っている。それだけ見れば普通の人間に見える。
「最近の魔物はバイクにも乗るのか」
「普段は人として暮らしている」
 これが魔物の返事だった。
「だからだ。これもまた当然だ」
「そうか。人としてか」
 今の返答で牧村はあることがわかった。それは魔物というものは普段は人に化けその中で普通に暮らしているということだ。だから彼が今まで、髑髏天使になる前に擦れ違った者達の中にも魔物だった者がいてもおかしくはない。このことがわかったのだった。

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